日経ビジネスの12/6号に経営新潮流として「エスノグラフィー」に関する記事が掲載されていた。 この記事をパッと見た時に「どんな新しい手法なんだろう?」と思って、興味津々に読んだのだが、自分にとっては全く新しいものではありませんでした。 実は10年前に、この手法で業務分析をして、その後の基幹業務システム更新時に活用したのです。 そう、自分は一昔前に実践していたんですねぇ。
では、「エスノグラフィー」とは何なのでしょうか?
大ざっぱに言えば、要件定義をする際に現場に入って、現場の人が無意識に行っていることを引っ張り出すと言う事ですね。 通常ですと、現場の代表者が打合せに出てくるなどして、SEからの質問に答える形で要件定義をしていきます。 この場合、現場の代表者が意識して行っている業務に関する情報しか引き出すことが出来ません。 多くのシステムが不評であったり、使えないものであったり、人間が機械に使われたりすると言うのは、この手法に問題があるからなんです。 そこで考え出されたのが、SEが現場に入って、現場の人たちが無意識に行っている行動を引き出し、分析し、要件定義に結びつけていくという手法なんですねぇ。
で、自分の場合で言うと、10年前に以前の会社で情報システム担当になったのですが、その時に基幹業務システムを導入している現場+αの部署に1週間ずつ張り付いて問題点の洗い出しなどを実施しました。 +αの部署に関しては、基幹業務システム更新時に新たに使用する可能性があることが予想されたので、追加したのです。 結果として、従来の基幹業務システムには多くの問題点があり、それをカバーするためにワードやエクセル、アクセスなどを使って、自分達のやりやすいように業務の流れを変えていたんですね。 しかも、それらはドキュメント化されておらず、口承伝承として代々引き継がれていたものなので、打合せなどの時には存在すら出てこないわけです。
それらを元に業務の機械化を推し進めるような仕様策定を行った結果、飛躍的に使いやすい、しかも業務量が増えているのにも関わらず時間外労働が減るという一石二鳥のシステムを作り上げることに成功したわけです。 ちなみに情報システム部門が関わらなかったシステムは業務分析が不十分で、使い難いシステムが脈々と引き継がれていました。
判りましたか?
既に、10年前に実施した業務分析手法が、今になって「新潮流」として一般化してきたわけです。 その時は、自分自身、特別な手法を用いているつもりは全くなかったのですが、実は画期的な手法だと言うことを、つい最近知ったわけなんです。 正直なところ、驚きました。 当たり前だと思っていたことが当たり前でない世の中だったことに…
ITの世界ではアジャイルだとか何だとか、開発手法については語られることが多くあります。 でも、システムを作る上で重要なのは開発手法ではなくて、業務分析手法だと言うことを、もっと多くの人に知って欲しいですね。 そして、多くの経営者に知って欲しいです。 開発手法で機能が決まるのではなく、業務分析手法で機能が決まるのだと言うことを。 そして、業務分析手法次第で経営の効率化も非効率化も決まるのだと言うことを。
なので、自分は社内SEを目指す人にはビジネス誌を読んで頂きたいと強く思っていますし、もっと言えば、開発SEもビジネス誌を読んで新しい時代の流れを感じ取って頂きたい。 そして、クソシステムを導入するような過ちを起こさないようにして頂きたいと強く願っています。 技術者は技術者であった時代は既に終わっています。 経営的センスや、新しい手法を編み出す力がない技術者は消えて無くなっても仕方がないと思っています。 実は10年前から、そんな時代であったと言うことなのです。
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